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親鸞会のコラム

何かとんでもないおとし物

平成20年6月12日更新

 長旅も 卒寿も新茶も 夢の中

 卒寿(90歳)を迎えた中曽根元首相の句である。

 自らこの句を解説して、こう述懐している。
「長い間、けんかしたり仲良くなったり、倒閣をやったり倒されたりしてきたが、まだ何も分かっちゃいない。夢の中を、さまよっているような感じだな」

 一代で世界の巨大企業の総帥となった松下幸之助氏も晩年、
「自分が最もやりたかったことを何もしなかったような気がする」
と述べたという。

 両氏の果たしえなかったものとは何だったのか?

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 谷川俊太郎さんの詩「かなしみ」の一節に、
「あの青い空の波の音が聞えるあたりに 何かとんでもないおとし物を 僕はしてきてしまつたらしい」
とある。
 その落とし物が何だったのか、思い出そうにも思い出せない。
 ただ、忘れたという感覚だけが残っていて。

 詩人の茨木のり子さんは、そのとんでもない落とし物とは、
「なんのために生まれてきたのだろう」
ということではないかと書いている。
 その洞察に心打たれた。

 科学は進歩し、物はあふれ、住みよい社会が実現しても大事な何かが欠けている。
 それが人生の目的と気づく人は幸いである。

 

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